勝負どころ

出演者
山本陽一郎
制作
PBA 太平洋放送協会
再生時間
5min
タグ
  • 疲れているとき
  • 不安や恐れを感じているとき
  • 孤独や悲しみを覚えるとき
  • 眠れないとき

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アップロード日
2022.03.23
カテゴリ
人物・人生
聖書箇所
[旧約聖書] イザヤ書 43章4節
放送日
2022.03.23

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「世の光」の時間です。いかがお過ごしですか、山本陽一郎です。 
今日は、父との記憶を辿ってみたいと思います。高校の音楽教師だった父は、幼い私をときどき職場や演奏会に連れていってくれました。合唱や吹奏楽を指導し、生徒さんたちに慕われている父を見ながら、「大きくなったら自分も学校の先生になりたいなあ」と思っていました。
ところが、思春期、さらに不登校になった頃から、私は父とあまり喋らなくなりました。この時期にありがちな、何とも微妙な関係性です。うまくいかないことばかりで悩む中、周囲に当たることも増えた私は、「親にとってはかなり接しにくかっただろうなあ」と思います。それでも父は、あまり動じる様子を見せずにいてくれたので、こっちはある意味で安心して葛藤できたのかもしれません。
そんな中、一度だけ、父と文字どおりの大接近をしたことがありました。
実はある時、私はすっかり希望を失ってしまい、人生から降りようとしてしまったことがあったのです。あの夜、うなだれたままの私を、父は自分の腕に受け止めてくれました。「自分の子がこんなに苦しんでいるのを見て、父さんは断腸の思いだ」そう言って、涙を流しました。そして、もう親よりも背が高い息子を自分の布団に入れて、朝まで添い寝をしてくれたのでした。「今日は一緒に寝るぞ」と。布団の中で、いつ以来の父のにおいだろう、と思ったのを覚えています。
お互い、もう格好をつけるような状況ではありませんでした。あれは勝負どころでした。けれども、こんな惨めな自分でも、迷惑しかかけていないような自分でも、「大切な息子だ」と言って、受け止めてくれた父の不器用な愛が、何にもない自分の心に沁み込んできました。私を支えてくれました。
神様は言われます。「わたしの目には、あなたは高価で尊い。わたしはあなたを愛している。」(イザヤ書43章4節)
30年前、父がどんなに私のことを心配して、全身全霊で子どもを生かそうとして、本気で寄り添ってくれたのか。祈ってくれていたのか。自分も今、親になって、言い表せない感謝と尊敬の思いが湧いてきます。
そして、私が叫び、探し求めていた神様は、父を通しても、ご自身の本気の愛を私に教えてくれていたのです。ああ、神は愛なり。

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